EtherWAN sFlow可視化監視|SNMP・Syslogでは見えない産業ネットワークの異常を検知
産業ネットワーク環境では、セキュリティ対策はもはやファイアウォールやアクセス制御ポリシーだけでは不十分です。ネットワーク構成の複雑化、接続デバイスの急増、攻撃手法の高度化により、リアルタイムでトラフィックを把握し、異常を検出することが重要な課題となっています。
EtherWANの産業用スイッチは新たに「可視化」トラフィック監視技術──sFlowを導入予定です。既存のSNMPやSyslogでは補えないセキュリティ監視の領域を強化し、より包括的なネットワーク可視化と防御力を実現します。
SNMP / Syslogだけでは足りない理由
多くのネットワーク機器はSNMPとSyslogに依存しています。SNMPはCPU使用率やインターフェース状態などの機器情報を、Syslogは設定変更やエラーなどのイベントログを提供します。しかし、異常トラフィックや攻撃(DDoS・内部濫用・プロトコル異常など)が発生した際、これらはパケットレベルでの挙動を捉えにくく、迅速な原因特定や対応が困難です。
- SNMP:機器の健全性監視やリソース管理に有効だが、パケットレベルの可視化は不可。
- Syslog:イベント追跡に優れるが、テキストログ中心で可視性が低い。
sFlowとは?
sFlow(Sampled Flow)は標準化されたトラフィック監視プロトコル(RFC 3176)で、「パケットサンプリング」と「インターフェース統計」の両方を併用し、流量情報をUDPでsFlow Collectorへプッシュ送信します。これによりリアルタイム分析と可視化を実現します。
コア構成
- sFlow Agent(エージェント):
スイッチやルーターに実装され、Flow Sample(パケット抽出)とCounter Sample(インターフェース統計)を定期的に送信。 - sFlow Collector(コレクター):
sFlowパケットを受信・解析し、グラフやレポートとして可視化。トラフィック異常検知を支援。
二重サンプリング機構:トラフィック挙動と機器状態を同時監視
- Flow Sample:
送信元/宛先IP、ポート、プロトコル、トラフィック方向を把握。DDoS検知・アプリ分析・内部不正監視に活用。 - Counter Sample:
パケット数、エラーレート、帯域変動などを収集し、性能監視やQoS設計に役立つ。

両サンプルは同一sFlow Datagram内で送信され、ネットワーク管理者はパケット詳細とインターフェース状態を同時に把握できます。
sFlow × SNMP × Syslog:補完関係による比較
| 項目 | sFlow | SNMP | Syslog |
|---|---|---|---|
| 通信方式 | Push(プッシュ配信) | Pull(ポーリング) | Push(イベントトリガー) |
| データ種別 | パケットレベル+インターフェース統計 | 機器ステータス | イベントログ |
| リアルタイム性 | 高 | 中 | 高 |
| セキュリティ監視力 | 高(異常トラフィック/DDoS検知) | 基本(機器状態) | 中(イベント追跡) |
| 可視化対応 | 強(IP/ポート/トレンド表示) | 弱(追加ツール必要) | 弱(テキスト中心) |
| パケット解析 | 可能 | 不可 | 不可 |
| 機器監視 | 部分的 | 可能 | 不可 |
| イベント記録 | 可能 | 不可 | 可能 |
| 異常検知 | 可能(流量・攻撃検出) | 不可 | 一部(SIEM連携) |
| 標準規格 | RFC 3176 | SNMPv1/v2c/v3 | RFC 5424 |
| 主な用途 | トラフィック分析、傾向予測、セキュリティ監視 | 機器管理、リソース監視 | 障害解析、イベント追跡 |
セキュリティ&運用シナリオ
- DDoS攻撃検知・防御:トラフィック急増を即座に検知し、閾値超過時にACLやブラックホールルートで遮断。
- 内部不正・濫用監視:可視化グラフで異常通信・プロトコル誤用を特定。
- トラフィック傾向予測・QoS最適化:長期トレンド分析により帯域制御とキュー設定を最適化。
- リアルタイム可視化・トラブル対応:SNMPポーリングより迅速に変化を把握し、ボトルネック特定を高速化。
まとめ
sFlowはSNMPやSyslogの代替ではなく、「パケット層」での可視化を補完する技術です。3つを組み合わせることでMMA(Monitoring・Management・Analysis)の全体像が完成し、産業ネットワークにおける可視化・防御・運用のバランスを最適化します。
EtherWANはこのsFlow可視化監視を次世代ネットワーク管理の中核とし、重要な産業インフラにおいて「高可用・高信頼・高セキュリティ」な運用を支援します。