FAQ

IEC 61850-90-4 に基づくスイッチの選定と統合の要点

IEC 61850-90-4 は、変電所オートメーションにおけるEthernet スイッチの中核的役割を強調します。以下は選定と設計時に必ず確認すべき要点をまとめたもので、保護・制御シナリオにおいてリアルタイム性・可用性・検証可能性を確保するための指針です。



スイッチ選定で考慮すべき 5 つの観点

  • マルチキャスト対応能力
    • GOOSESV(Sampled Values) のマルチキャスト伝送をサポートすること。
    • IGMP Snooping などでマルチキャストグループを適切に管理しフラッディングを防止。VLAN/QoS と併用して分離・優先制御を行う。
  • 高スループットと低遅延
    • 高頻度・大量パケット(特に SV)をドロップなく処理できること。
    • 保護/制御アプリの許容範囲(通常は数百マイクロ秒)に収まる遅延と、ラインレート転送を支える十分なバッファを備えること。
  • 時刻同期のサポート
    • IEEE 1588 PTP をサポートし、Power Profile(IEC/IEEE 61850-9-3) への適合を優先。
    • Boundary Clock(BC) または Transparent Clock(TC) により、ネットワーク全体の同期精度と安定性を向上。
  • 冗長化メカニズム
    • PRP(Parallel Redundancy Protocol) または HSR(High-availability Seamless Redundancy) などのシームレス冗長をサポート。
    • 単一装置やリンク故障時でも通信を中断させない。必要に応じて RedBox を使用。
  • 産業グレードの信頼性
    • 現場の温度・湿度・電磁環境に応じた産業グレード仕様を選定。
    • 長期安定運用に耐える高い MTBF と、堅牢な電源/サージ保護設計を備えること。


ネットワーク統合と設計の要点

  • トポロジ設計
    • コア/ディストリビューション/アクセスのレイヤ構成を採用し、運用性と拡張性を確保。
    • 用途に応じて星型・リング・二重ネットワークを選択し、耐障害性と保守性のバランスを取る。
  • トラフィック分析とキャパシティ見積もり
    • GOOSE/SV/MMS の種類とレートに基づいてスループットとバッファを見積もる。
    • 最悪ケースでスイッチおよびバックボーンの性能と損失率を検証。
  • SCL 設定と整合性
    • SCL(System Configuration Language) でトポロジと装置パラメータを記述。
    • スイッチと IED(Intelligent Electronic Devices) の通信整合とトレーサビリティを維持。
  • 試験と検証
    • ラボシミュレーションとストレス試験を実施し、冗長切替時間・PTP 同期精度・パケット損失率を評価。
    • FAT/SAT で最終検証を行い、試験レポートを保管。


推奨機能対照表

項目説明
ネットワークトポロジ設計星型・リング・二重ネットワークに対応。長短を分析し、耐障害性と冗長性を評価。
時刻同期IEEE 1588v2 PTP(Power Profile)。機種により TC/BC を提供。
GOOSE/SV 伝送マルチキャスト線速・低遅延。VLAN/QoS と IGMP Snooping を計画。
シームレス冗長PRP/HSR。必要に応じて RedBox を使用。RSTP/ERPS/α-Ring(非シームレス)との併用も可能。
SCL 設定サポートSCL により装置・ネットワーク設定を管理し、設定の一貫性とバージョン管理を確保。
ブリッジ/クロックモデルトポロジ/クロックのオブジェクトモデルをサポートし、システム統合とエンジニアリングを容易に。
設計と試験設計レビュー、FAT/SAT。要件に応じて PICS/PIXIT/MICS と試験レポートを提供。

上記の推奨事項は、実プロジェクトと現場条件に照らして総合的に評価してください。

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